SUIRYO 翠陵 vol.87
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07SUIRYO 87しても何か言葉遊びをしているように感じて、次第に何か社会の役に立つことがしたいと考えを巡らせるようになり、福祉の世界に飛び込みました。重度の障がいのある方の生活支援員や社会福祉法人事務を経験する中で、さまざまな福祉業界の課題や疑問を目の当たりにするようになりました。さまざまな研修や学会に参加すると、私が所属していた事業所法人だけでなく、全国津々浦々の介護施設等で同じような虐待の問題や悩みを抱えていることがわかり、福祉業界を外側から変えていく必要性があるのではと考えるようになりました。食事介助や入浴介助といった日々の業務も、本来ならばご利用者様の快適さを追求するべきなのに、人材不足や忙しさもあり、支援をする介護職員の都合優先。まるでベルトコンベアのように進められている施設もあります。福祉はサービス業であるはずなのに、現場ではサービスができていない。福祉業界が抱えている大きな課題に対して、真正面から向き合いたい。福祉はサービス業という考えを改めて介護職員や社会に提示することで、虐待や不適切なケアをなくしたい。福祉業界をもっとワクワクするクリエイティブな世界にしたい。そんな思いが次第に強くなり、Misaki oasis labを立ち上げることを決意しました。介護職員の心構えを伝える研修を『福祉を最高のサービス業にする』という目標を掲げて運営しているMisaki oasis labでは、福祉事務所で虐待防止のための研修を出張やオンラインで開催しています。内容は多岐にわたりますが、サービス業としての心構えを介護職員に意識してもらうために、接遇マナーを伝えることもあります。「接遇だなんて介護職員はホテルマンと違う」という声もありますが、接遇をスキルとして身につけておけば、忙しいとき、ご利用者様の言動に心がざわついてしまったときでも通常通りのサービスを続けることができます。私自身が福祉の現場にいた経験を生かして、何かのきっかけで興奮して暴れてしまったご利用者様がいたら、慌てて解決しようとせず、まず介護職員がクールダウンをしてご利用者様の気持ちに寄り添うことなど具体的な解決法を教えることもあります。私は、最高のサービスをするためには、まず介護職員自身が満たされていることが大切だと考えています。ビジネスとしてはまだまだ難しい点もありますが、心を満たすための研修や講演会、イベントなども積極的に行っていけたらと思いながら、日々尽力しています。母校の学生たちに伝えたいこと振り返ると、神戸学院大学は私にとって最高の学び舎でした。開放的な雰囲気の中で養われた柔軟な考え方、厳しい社会の中で生き抜くための平衡感覚、友人や先生方との絆は仕事に取り組む上でも、とても役に立っています。指導教員であった佐々木先生は、今も私のことを気にかけて連絡をくださるなど、関係が続いています。まだ企画を考えているところではありますが、私が経験してきた福祉業界の話、会社員を辞めて独立した体験談などを、いつか母校の学生にお話しできる機会があればと思います。私もMisaki oasis labも、まだまだ微力ではありますが、福祉業界の未来のため、そして神戸学院大学のために少しでも貢献できれば嬉しいです。福祉のお仕事をしている方もそうでない方も皆さんに読んでいただきたい一冊です。「それは一体誰のためにやっていることなのか?」という問い直しを迫る本です。心を込めて書いたので、ぜひ何度も読み返しながら自身のお仕事や生活に落とし込んで考えるきっかけとなっていただければ幸いです。24ページと非常に短い本なので無理なく読めます。福祉が知らない世界著書紹介Book Introduction

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