SUIRYO 翠陵 vol.88
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カタカナの社名がまず目を惹く、株式会社ブルアンドベア。変わった名前ならすぐ覚えていただけるので、と応える代表取締役の橋本克美さん。橋本さんの父が、自身の干支・丑にちなんで「ブル(bull:雄牛)」を社名につけ鐡工社ブルを60年前に創業。その事業をベースに、第二創業として今度は橋本さん自らが起こしたのが株式会社ブルアンドベアでした。社名の由来となった思いをお聞きすれば、そこには経営トップとしての使命と覚悟がありました。会社設立で第二創業と事業承継を果たす「ブル・ベア」は、相場の動向を示す証券用語でした。 ブル(Bull)は雄牛が角を下から上へ突き上げる仕草から相場が上昇していることを、ベア(Bear)は熊が前足を振り下ろす仕草から相場が下落していることを表しています。「ブル&ベア」で売買が成り立つというわけです。商売は売り買いが成りたって初めて成立するところからつけた社名でした。商売は続けないと意味がありません。続けることで、社会や社員に対しての責任を全うすることができます。そんな、経営トップが担うべき責任の大きさと存続と発展を願う思いを社名に託しました。ブルアンドベアでは、製品開発に乗り出しました。それまでは、父の鐵工社ブルで忙しくはしていましたが、メーカーから買付したものを得意先に取り付け、以後そのメンテナンスを請け負う代理店業務では、「薄利多売」の構造から抜け出せず、バブル崩壊以降の生き残りを考えれば限界を感じていました。それで、鐵工社ブルは、アルミの加工技術と工場設備を活かして製造部門として、新たに起こしたブルアンドベアで開発から営業までを事業領域とすることとしました。その結果、日本初「アルミ11SUIRYO 88「環境をデザインして、快適を創る」防音のエキスパートとして製」の防音パネルをブルアンドベアで開発し、鐵工社ブルでさまざまな形状に加工して、導入先を確保していくことになりました。緻密な予測値計算と独自の技術で、騒音軽減最初の10年間は苦労しました。当時は、工場内は騒音があって当たり前の時代。従業員は耳栓をして仕事をしていて、注意を払うべき音まで遮断してしまうので、危険と隣り合わせの作業が日常的に行われていました。「産業騒音」が社会で認知されるようになった頃から、ようやく私たちの業務も理解されるようになってきました。工場内や周囲への影響から騒音に対しての規制値をクリアすることが操業の前提となった今、より社会のニーズに合致した企業としての使命を帯びるようになりました。仕事の流れとしては、まず、音の発生源とされる機器が設置されている現場に入り、音を実測します。そこから緻密な計算を基とした軽減予測値による提案を依頼主に行います。それが承認されて、初めて受注となります。承認作業にかなりの労力を要するうえ、設置場所のスペースや形状は当然のこと依頼先すべてで異なり、毎回勝手が違うなかでの苦労があります。まさに、一品一様のオーダーメイドと言える仕事なので、達成感もやりがいも半端ないものです。B to C という新たなビジネスモデルの創出さらに10年ほど経った2009年4月には、文部科学大臣表彰「科学技術賞(技術部門)」を受賞しました。それ以前に、京都市「優良企業100社」に認定されていたので、京都市から文科省へ推薦された結果で、公的にも私たちの高い技術と社会への貢献が認められたときでもありました。同窓生NOW!株式会社ブルアンドベア 代表取締役1988年法学部卒業橋本 克美さんはしもとかつみ神戸学院大学卒業後は、日本軽金属株式会社に入社。そこで5年間の経験を積んだ後に、父親が1964年に創業した株式会社鐡工社ブルへ。1990年、株式会社鐡工社ブルの関連会社としての株式会社ブルアンドベアの創業者となり、現在は、株式会社ブルアンドベアとともに株式会社鐡工社ブルの代表取締役も兼ねる。

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