SUIRYO 翠陵 vol.88
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03SUIRYO 88「チャンス!」と言った瞬間から掛け声が変わります。「よし、ドリスいけ!流れを変えるチャンスは今や!」「ここで抑えたら、明日も勝てるぞ!」うまくいかなかったらどうしよう、失敗したらどうしよう、まだ何も起こっていないのにどんどんマイナスの方向に勝手に考えを巡らせてしまう。これはとてももったいないことです。「苦楽力(くらくりょく)」からも自分の可能性を信じ、前を向き挑戦をうまくいかないこともチャンスと言いながら、前を向いて挑戦していく、この状況を楽しむのです。例えば、右肘を怪我しているけれど、それなら下半身を鍛えるチャンスではないのかなと。誰かの見本となる映像を見て徹底的に研究するチャンスが今なのではと。これが二つ目の力、苦しい楽しい力と書く「苦楽力」です。ピンチで、チャンス!と言ってくれた2人の選手は2023年オフに戦力外になりました。でも私は2人が阪神タイガースで一緒に野球をやったことを思い出し、今がチャンス!と言いながら、次の舞台に向かっていってくれる、そんな人生を歩んでいってくれるのではないかなと思っています。うまくいかないことが人生の中ではありますが、そこだけで、すべてが決まるということは絶対にないのです。自分の人生どうとでも変えられるのです。自分の可能性を信じる。そして、どうせやるなら人生を楽しむ。皆さん、特に学生の方には、そんな人生を歩んでもらいたいなと思っています。人に喜んでもらい、それを自らの力へと変える「他喜力(たきりょく)」三つ目は「他喜力(他気力)」です。他の人に喜んでもらう力です。さらには、それを自分の気力へと変える力です。自分のためだけであればやめようと思うことも、ファンの誰かが、家族が応援してくれていると思えばできることがあります。自分の限界は自分が作っているだけなのです。ここでも福島先生に教えてもらいました。苦しくなった時に「もう一回!」と言ってみる。そういう日々をつなげていくことが諦めないということなんだと。実際に、多くの人が自分のことで、チームのことで喜んでくれていると感じます。自分が頑張ることでその先に少しでも夢や希望を思い描くことができれば苦しいことも乗り越えられる。そういうものが野球にはあるなと、私自身実感しました。言葉も大事にしていたものの一つです。指導者の言葉の選択一つで選手の導き方が変わっていきます。選手を良い方向へと導きたくても否定的な言葉を使うことで逆効果になることがあります。例えば、ピッチャーに「高めに浮かすな」と言うと、ピッチャーの頭の中には高めに浮く映像が浮かんでしまいます。この場合「低めに投げ切れ」「低めに投げていれば、どんな球でもキャッチャーが止めてやる」と言えばいいはずなのです。本当は低めに投げてほしいのに、私たちは逆に「高めに浮かすな」とつい言ってしまいます。2023年のシーズン、遊撃手として活躍した木浪聖也選手は2022年のシーズンはレギュラー選手ではなく、2023年のシーズンでも開幕当初は二番手という立場でした。私は2023年のシーズンが始まる前の1月から、「いつか、木浪はくると思います」と、ことあるごとに話していました。私が監督の頃から、彼の人知れぬ努力の姿や思いに気づいていたからでした。木浪に「比べるのは?」と声を掛け、「昨日の自分」と返させていました。「他者や環境に影響されるのではなく、自分自身が争う相手は、昨日の自分だ」と言い聞かせていたのです。だから、今の活躍は現状に恵まれなくても日々モチベーション高くやっていたことへの答えだったのです。いつまでも挑戦を忘れない心で明日へ人に公平に与えられているのは「1日は24時間」で「いつかは死ぬ」ということだけです。そして、人生を振り返るとき、チャレンジしなかったことを悔やむ人が多いそうです。もちろんチャレンジすれば、失敗する怖さもあります。しかし、倒れなかったから強いのではなく、倒れても倒れてもまた起き上がる人が、強いのだと私は思います。三日坊主でも結構!その度にまたやればいい。少しのチャレンジで世界は変わります。私はこれからも挑戦し続ける人生を歩んでいきます。皆さんも挑戦しましょう!HOMECOMING DAYHOMECOMING DAY

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