有瀬キャンパス正門前の歩道を南へ歩くこと2、3分。煉瓦造りの静かな佇まいを見せる「紅茶専門店 ARIEL」。アンティークな雰囲気にあふれ、南西の窓一面に注ぐ陽光が、レースのカーテンを通して優しく満たす。カウンターの向こうで出迎えるのは、端正な身のこなしが粋に感じるマスターの渡邊一典さん。学生の頃からの紅茶好きが高じて、専門店を開業するまでになり、さらにはカルチャースクールや調理師学校など、プロアマを問わず数々の講座で講師を務める、まさに紅茶のマイスター。いただいた名刺には「実践紅茶研究家」とあります。拠り所となる大きな存在を得て開業へ神戸学院大学法学部から大学院法学研究科に進み、一貫して有瀬キャンパスで学生時代を過ごしました。法学部に入学したのは、卒業後は父が設立した病院の経営に携わることになっていたので、法律上の知識があればいずれ役に立つこともあるかと考えてのことでした。父は立ち上げから3年ほどして事業が軌道に乗れば、その将来を後進に委ねては、次の新規事業へと関心を移すような人でした。だから自分も同じようにして3年間は病院経営を担ったのち、学生時代から魅せられていた紅茶の世界に足を踏み入れることになりました。反対することなく好きにさせてくれた父親の存在が、大きかったと今は感じます。学生当時は、神戸・三宮のセンタープラザ地下1階に11SUIRYO 89紅茶の余韻を楽しむように 過ぎゆく時に思いを馳せてあった紅茶専門店「ティーハウスムジカ(MUSICA)」に通っていました。店のある場所がわかりにくいにもかかわらず、一日の来客が200人を数えることもある店でした。そのうちに給料なしで店を手伝うようになり、一切教えてもらえなくても、ただ横で見ているだけでよいと思える頃でした。開店10年目、自分を唯一の拠り所に前へ開店10年目にして、転機が訪れます。調理製菓専門学校やダイナースクラブ会員向けなどの講師の依頼が舞い込み、半ば無理やり教壇に立たされ、専門学校では60人を相手に教えることになりました。そこで、教材を作るために10年間続けてきたことを整理する中で気づいたことがあり、それまでのやり方を見直すことを決めました。ポットからサーブされる1杯目はストレートで、2杯目はえぐみが出たら淹れ直すか、ミルクを入れるかが、それまでの紅茶専門店での一般的な作法。私も10年そのスタイルでした。それを改めてからは、アリエルの紅茶は他店とは違うものになりました。カップに入れてすぐは香りが最高の状態、2杯目を飲む頃にはカフェインとカテキンという味の核となる成分がほどよく調和。それ以降は、まろやかさが増していきます。世間一般の紅茶専門店がミルクを使う時代にもかかわらず、「アリエル」ではいち早くミルクを置かなくなりました。同窓生NOW!紅茶専門店ARIEL(アリエル)のオーナー法学部1974年度卒法学研究科1976年度卒渡邊 一典さんわたなべかずのり神戸学院大学法学部卒業の1975年に、神戸学院大学大学院法学研究科二期生となる。1981年、自身が通った有瀬キャンパスのすぐ南に、紅茶専門店ARIEL(アリエル)をオープン。1995年の阪神・淡路大震災では、被災後2週間で店を再開。今も、オーナーとして自ら店に立つ。
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