SUIRYO 翠陵 vol.90
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33SUIRYO 90記念講演コミュニケーターとは、異なる世界を翻訳し、橋を架ける人である初代学部長 野口 ジュディ 津多江名誉教授本日はグローバル・コミュニケーション学部開設10周年、誠におめでとうございます。初代学部長として、皆さまとこの佳き日を祝えることを光栄に思います。私が当学部の立ち上げに携わった際、最も大切にしたことは「コミュニケーターを育てる」という視点でした。コミュニケーションの語源は、ラテン語の「コミュニカレ」、つまり「分かち合う」「つなぐ」という言葉にあります。私たちがめざしてきたのは、単に英語や中国語が話せる人を育むことではありません。言葉の壁だけでなく、文化の壁、そして心の壁を越えて、人々と「共有」し「つながる」ことができる人材を育てることでした。そのために、私たちは「GCアブロード(全員留学)」やプロジェクト型の学習を教育の柱に据えました。学生たちが教室という安全な場所を飛び出し、異国の地や実社会の多様なコミュニティの中で葛藤し、他者と向き合う。その経験こそが、理論だけでは得られない「生きた対話力」を養うと信じていたからです。現代はデジタル化が進み、瞬時に世界とつながる一方で、皮肉にも情報の分断や対立が加速しています。こうした時代において、情報の真実を見極め、異なる意見の間で調整を図る「メディエーター(調整役)」としての能力は、これまで以上に重要になっています。私の専門である「特定の目的のための英語教育(ESP)」においても、専門知識とコミュニケーション能力をいかに融合させ、国境を越えた課題解決に結びつけるかが常に問われてきました。今日ここには、社会へ羽ばたいた卒業生も多く集まっています。卒業生はすでに、それぞれの現場でコミュニティ同士を繋ぐ「架け橋」として活躍してくれています。グローバル・コミュニケーション学部で学んだことは、単なるスキルではありません。それは生涯を通じて他者と誠実に向き合い、共に生きていくための「哲学」です。この10年という節目をスタートラインとして、当学部がこれからも変化し続ける世界において、多様な人々が交差し、新たな価値を共創する「対話の拠点」であり続けることを願ってやみません。

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