SUIRYO 翠陵 vol.90
37/56

は全く同じ地平にあります。団地で学生たちと開催するイベントでは、不登校の子も、障がいのある子も、みんなが一緒になって笑います。それを見つめる保護者の方たちの安堵の表情、そして手弁当で動く学生たちの頼もしい後ろ姿。そこには、まさに「リハビリテーション(全人間的復権)」の原風景があります。本学の学生、特に総合リハビリテーション学部の学生は、本当に優しい。弱い立場の人に寄り添える「良い心のあり方」を持っています。学部長として、私はこの「優しさ」を「強さ」に変えていけるような環境を整えていきたい。2026年にはインドネシアからゲストを招く学会も控えていますが、常に世界を見据えつつ、この有瀬の地から一歩を踏み出す勇気を育てていきたいと考えています。■ 卒業生の皆さまへ ―― 共に歩む未来「何一つ無駄なことはなかった」。今、心からそう思えます。法学部で議論に明け暮れた日々も、バングラデシュの路上で途方に暮れた経験も、すべてが今の私を形作っています。卒業生の皆さま、私たちの母校は、多様な個性が交わり、新しい価値を生み出す場所へと進化し続けています。卒業生である私が学部長を務めるこの学部から、社会に光を届ける人材を一人でも多く送り出せるよう、邁進してまいります。これからも、ともにこの母校を誇りとし、それぞれの場所で「行動」を続けていきましょう。研究室のドアは、いつでも開いています。懐かしい顔に会えるのを、心から楽しみにしています。36SUIRYO 90を続けるうちに、いつしか現地に深いネットワークができていきました。政治が弱者を守っていないことを痛感し、清掃労働者や路上の物乞いの調査を行いました。路上で生活する人々の中に障がいのある方が非常に多いという厳しい現実に直面しました。病院や特別支援学校を視察した際に出合ったのが、「リハビリテーション」というキーワードです。「研究者として分析するだけでいいのか。この状況を少しでも良くするために、自分にできることはないのか」。その自問自答が、私を「社会リハビリテーション」の世界へと導きました。政治学や経済学をベースにしながら、いかにしてマイノリティの人々が尊厳を持って暮らせる社会を作るか。学問の境界を越え、NGO活動や、現在の3Dプリンターを用いた自助具製作へと活動が広がっていったのは、私の中では必然のことでした。■ 「佐野・ラボ」という居場所2010年に教員として母校に戻ってから、私は一つの理想を掲げました。それは、かつて自分が救われたような、自由で熱い議論ができる場を学生たちに提供することです。私の研究室には、いつも多様な人々が出入りしています。総合リハビリテーション学部の学生はもちろん、他学部の学生、教職員、時には私のブログのファンの方まで。「佐野・ラボ」は、単なる研究の場ではなく、誰もが自分を表現できる「居場所」でありたいと思っています。廊下でポツンとしている学生がいれば、私は必ず声をかけます。大学に馴染めない、あるいは第一志望でなく意気消沈している学生もいます。そんな時、私は一人の先輩として伝えます。「ここは私が出た大学や。案外悪くないよ。ここで何を見つけるかは自分次第やで」と。母校を誇りに思う気持ちが、学生たちの心に小さな灯をともすきっかけになればと願っています。■ 市田響さんとの対話 ―― 受け継がれる「お節介」の精神今回、教え子の一人である市田響さんと再会し、当時の話に花が咲きました。市田さんはゼミ生ではありませんでしたが、私の授業をきっかけに研究室へ顔を出すようになった一人です。彼が語ってくれたエピソードの中で、私が学生を同窓会に連れ出し、名刺交換をさせた話がありました。「若い時こそ、自分とは違う世代の人と出会い、揉まれるべきだ」という私なりの「お節介」です。市田さんが今、同窓会の役員として活躍している姿を見るのは、教育者として、そして一人の卒業生として、これ以上の喜びはありません。私たちが大学で育んだ「繋がり」が、卒業後もこうして豊かな実を結んでいる。それこそが、本学の持つ底力なのだと確信しています。■ 「Think Globally, Act Locally」を体現する私の活動のモットーは「Think Globally, Act Locally(地球規模で考え、足元から行動せよ)」です。これは、バングラデシュでの支援活動も、地元の明舞団地でのまちづくりも、私の中で教え子の市田響さんと当時の話に花が咲く

元のページ  ../index.html#37

このブックを見る