SUIRYO 翠陵 vol.90
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38SUIRYO 90てすべてが経験なんだよね。二つとして同じ試合はない。その怖さとおもしろさを、井上くんはこれからもっと深く知っていくことになると思うよ。―社会人である熊谷さん、見村さんは、どのようなスケジュールで両立を図っていますか?また、井上さんは先輩の姿を見て将来をどのように描いていますか。熊谷:私は大学を卒業してからプロになったので、今は完全に仕事とボクシングの二重生活です。朝6時から15時まで働いて、それから軽く走って、18時過ぎにはジムで練習。大学時代はコロナ禍でボクシング部の活動も制限されていましたし、周りに競技について話すことのできる友人も少なかった。だからこそ、今こうして応援してくれる人が増えて、休日に試合を観に来てもらえることには感謝しかありません。見村:私も同じです。大学時代のアルバイト先にそのまま就職して、今は午後の時間を練習に充てさせてもらっています。現在は役職に就いて、会社の新しい事業も任されるようになりました。そのために勉強も始めましたが、それが意外と新鮮で。仕事で責任を持つことが、ボクシングに悔いなく打ち込むための「拠り所」になっている気がします。井上:お二人の姿を見ていると、本当に頭が下がります。実は私自身、今大きな決断を迫られています。将来は消防官をめざしていますが、公務員は副業禁止ですし、怪我のリスクがある競技を続けることへの厳しさは理解しています。就職活動も始まっていますが、指導教員の先生に相談しながら、自分の進むべき道を必死に模索しているところです。―過酷な環境のなかで、自分を奮い立たせるものは何ですか?井上:私は、練習用シューズに『初志貫徹』と書いています。ストイックに自分を追い込む先輩たちの姿を見て、「自分があのリングに立つのは無理なんじゃないか」と弱気になるたびに、この言葉を見つめて今日まで努力を続けてきました。熊谷:私は『不撓不屈』。ボクシングは、一度負けるだけで心にものすごく重くのしかかるんです。負けが込んでくると、「もうやめようか」という考えが頭をよぎる。でも、ここでやめてしまったら、今まで頑張ってきた自分が消えてしまう気がして。この言葉は、私なりの「意地」ですね。見村:私の場合は、ボクシングに没頭してきた分、これからは仕事や社会的な責任もしっかり果たしたいという思いが強いです。それが結果的に、リングの上での自信にもつながると思っています。―最後に、この記事を読んでいる現役生や卒業生の皆さんにメッセージをお願いします。熊谷:ボクシングは過酷ですが、やり遂げた先にある景色は特別です。何か夢中になれるものを見つけてほしいですね。見村:神戸学院大学の仲間との出会いが、こうしてプロの世界でもつながっている。この縁を大切にしながら、私も日本ランキングのさらに上をめざします。井上:この3年間、大学生として本当に有意義な時間を過ごしてきました。ボクシングを選んだことで苦しいこともありましたが、支えてくださる人たちのおかげで、一歩ずつ進んできました。四角いリングで奮闘する私たちを、少しでも知っていただけたら嬉しいです。ぜひ、応援よろしくお願いします!取材を終えて・・・同じ学び舎で育ち、同じジムで汗を流す彼ら。世代は違えども、お互いを尊敬し合うその姿からは、競技者としての厳しさと、神戸学院大学の卒業生・在学生としての誇りが感じられました。彼らの挑戦は、これからも続きます。仕事と練習、二重生活を支える「感謝」靴に刻んだ「言葉」と、譲れない「意地」神戸学院から、未来の自分へ

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