同窓生インタビュー
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
グループ研究・薬事センター担当 執行役員
マルチプルインテリジェンスリサーチセンター所長
医学博士
サイエンスの本質に触れ、研究者としての基礎を培った 学生時代
待ち望んでも得られなかったものが遺伝子工学によって生み出されることに感動していたのが高校生の頃。薬学部への進学を決めたのも、難病治療など、世の中に役立つ可能性を秘めたバイオテクノロジーや医療について学びたいという思いからでした。大学では「この講義で話すことは、明日には間違っているかもしれない。免疫学は、毎日、急速な勢いで進んでいる」と話された眞弓忠範先生(現:名誉教授)の授業が最も印象的でした。サイエンスは受け身ではなく、自分で考え切り拓くことだと知った瞬間でした。
神戸学院大学では、一定の真実に触れることのできる哲学や西洋文学を学ぶことの楽しさを経験する一方で、専門科目で教科書に載っていることはすでに真実とは限らないと教えられたことにとても驚くと同時に、大学で学ぶことの醍醐味にも気づけた気がします。
社会人となりアートを通して、サイエンスの本質に迫る
個性の際立つ芸術家たちが互いの個性を尊重しながら新しいものを作っていく姿は、研究者とも重なります。「研究者同士の個性のぶつかり合いが、新しい価値や知見を生む」とノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典先生もおっしゃっていました。「POLA美術館」で会議をしたり、会社のビジョンを自分なりに絵にして社内掲示したりと、我が社もアートに学ぼうとしています。真実や本質を見つけるきっかけにアート的な要素が役割を果たすことが実際にあり、透明感あるファンデーションの開発に点描の手法が活かされたこともあります。
喜ばれることに喜びを
技術畑にいた創業者が手の荒れている奥様のためにクリームを作ったことを発祥とするPOLAは、2019年で創業90周年を迎えます。会社の成り立つ根本に技術や研究があることで、独創的な発想や個性には理解があり、また企業風土としてアートとも縁が深く、愛を生み育む土壌があります。創業者の言葉「喜ばれることに喜びを」のままに、お客様が感動してくれるものづくりがその基本です。
そして『史上初』の冠をいただいた今回の製品も、今から15年前に開発に着手した当時は、誰も製品化できるとは思っていなかったはずです。しかし、会社のトップからは「面白いから続けなさい」と、研究をサポートしてもらいました。私もリーダーとしての役割を担うときは、「面白いか」「将来必ず伸びるか」といった視点で、常に自分に問いかけながら、チームのメンバー個々の力を伸ばしていくように心がけました。
さらに、研究・開発に費やす長い歳月の中では、少しでも前に進んでいることをチームメンバーに実感してもらうことも必要でした。―行列のできる店に並んでいて、気づくと後ろにも列が伸びて位置的には確実に前に進んでいる―そんな風に、今やっていることにも不安を抱かせないよう配慮し、メンバーたちにその都度説明し励まし続けました。
同窓会報「翠陵83号」より抜粋